【株式会社PDS Part2】一次医療におけるエコー検査の実情とは!?
2021年5月20日開催の第12回問診アカデミーで、株式会社PDSの渋谷様に「外来診療におけるエコー検査活用術」について伺いました。
▼目次
- 開業医から依頼の多いエコー検査項目
- 一次医療におけるエコー検査の実情
開業医から依頼の多いエコー検査項目
吉永
この中でどの依頼が一番多いのですか。
渋谷
やはり頸動脈エコー、腹部エコーが多く、それぞれ3割で、6割ですね。あと甲状腺エコーも意外に多いですが、これの所以としては頸動脈エコーを行った際に必ず甲状腺エコーの腫瘤性病変の有無もスクリーニングをかけています。実際に30%くらいの確率でで腫瘤性病変が見つかってきますので、これをピックアップした際にまたしっかり甲状腺のエコーとして予約を取っていただいて検査を行っています。甲状腺の主に腫瘤性病変をスクリーニングするという意味での検査も10%くらいあります。
最近すごく増えているのが下肢血管エコーですね。これは3年前に保険点数の改定がありまして100点ぐらい増えたというところもありますし、熊本の震災で車中泊のDVTに関してかなり活躍したということもありまして、深部静脈のエコーもしくは下肢動脈のエコーは非常に多いです。
吉永
下肢血管エコーはDVTのルールアウトが第一ですか。
渋谷
そうですね。深部静脈に関してはDVTのルールアウトになります。特に去年の4月~6月ぐらいは、皆さん自粛で自宅にいらっしゃった方が多く、DVTはいつも以上にかなり依頼がありました。
吉永
ご高齢の方とかでむくみを訴えられているというので、ルールアウトが多かったということですか。
渋谷
そうですね。
吉永
ありがとうございます。
渋谷
今お示しさせていただきました全身を網羅するエコーの検査の保険点数ですね。代表的なものとしてまず腹部エコーが530点です。先ほど説明させていただきました下肢血管が450点。心エコー880点で、その三つに属さないその他が350点になります。
吉永
心エコーのほうが点数が高いのですね知りませんでした。
渋谷
そうですね。心エコーは880点とかなりエコーの中でも高いですね。検査の時間をかなり使うことや知識技術も豊富に必要であることが理由として挙げられます。
吉永
オーダーされるクリニックは循環器内科が多いのですか。
渋谷
まんべんなくございますね。もちろん循環器内科の先生も多くご契約いただいていますが、糖尿病内科、消化器内科、神経内科などの内科でまんべんなくご依頼いただいています。
実際消化器内科の先生から心エコーのオーダーをいただくことは多いです。聴診器で心雑音が気になっていたというところでなかなか専門外ですとその時点ですぐ対象外ということになってしまうのですが、私どもと契約していただいている中でまずはエコーでスクリーニングするというオーダーをいただく例が多いです。
ここまでが保険点数の状況でした。
一次医療におけるエコー検査の実情
吉永
次にエコーの実情ですね。ライセンス的なところでお話しさせていただきたいと思います。エコー検査これは実際誰が行うかということになりますが当然ドクターは行えます。あとは法律として許されているのが医師の指示のもと臨床検査技師、診療放射線技師、看護師この三つのコメディカルになります。
吉永
看護師もできることは知りませんでした。
渋谷
割合的には実際行う看護師さんは多くはないですが、特に助産師さんとか周産期領域で行う例が増えてきています。ライセンスとしては医師、臨床検査技師、診療放射線技師、看護師これらのライセンスを持っている方が検査を行えるという状況です。
また、日本超音波医学会、日本超音波検査学会この2学会が認定する認定超音波検査士という資格があります。これはドクターにおいては専門医のようなものになります。臨床検査技師、診療放射線技師を持っていれば検査を行えますが、認定資格を持っている人たちはこの資格を目指して結構学んでいる方達が多いです。内訳ですが、このようになっております。
吉永
初めて知りました。
渋谷
認定超音波検査士になりますが、7つの領域がございます。エコーといえば腹部エコーというイメージが大きいと思いますが、実際に38%の方が消化器領域の認定を持っていらっしゃいます。
吉永
これは臓器ごとに一つずつ取らなければならないのですか。
渋谷
そうですね。一年に一つずつ取っております。
吉永
では、全部コンプリートしている人はまれですか。
渋谷
そうですね。全国的にまれですけど私はちなみに3つなんですがうちのスタッフですと、2名が6領域持っています。
吉永
大体皆さん一つという感じですか?
渋谷
そのようなことはないです。一つ取得したらそのままの勢いで学んでいく感じになります。症例をレポーティングしたり筆記の試験があったりと、それなりにハードルがありますので皆さん毎年ここに向けて頑張っていますね。
次に、実際一次医療施設での超音波検査事情と問題点を列挙させていただきました。大きく医師が行う場合と技師が行う場合がの2つに分かれると思いますが、まず一つ目の医師が行う場合ですね。これは先ほど冒頭に吉永先生がおっしゃっていただいたように先生がお忙しいので検査をする時間がないというのが問題点としてあると思います。
次に専門分野以外の経験がないということになりますが、例えば消化器領域の先生でしたら、腹部エコーのトレーニングは受けているかもしれませんが、消化器領域で開業したとしても先ほどの頸動脈ですね、生活習慣病を見るというパターンは往々にして出てくると思うのでその際に頸動脈エコーができるかというとそのトレーニングっていうのはなかなか職務の中で行うという機会はないと思います。また、病院自体が以前よりも分業化していると感じています。その為、先生たちがトレーニングを行うという時間が昔に比べて圧倒的に減っているというのが実情かと思います。
続いて二つ目ですね。技師が行う場合ですが、今では病院ですらエコーの検査師が補充できていないという問題点があると思います。大学病院などの大きな病院ですらなかなか回らないというところで一次医療においても検査ができる人材が圧倒的に足りなしですね。
次に全領域をカバー出来ないということについてですが、エコーも種類が色々ある中で、人材によってできる部位が限られていますね。
それ以外の問題点としては技術習得まで時間を要するという点が挙げられます。腹部エコーで、一人前になるには1年以上かかります。それでも長い経験を重ねた人には圧倒的に劣ってしまいますし、一領域覚えることに時間が非常にかかります。最近は各領域ごとにガイドラインが出ています。以前に比べてガイドラインがどんどん出ているというのがあり、それを学ぶ私達として本当にありがたい話ですがそれが、年々新しいものに改定されていきまして、さらにはいろんな領域のガイドラインが出てくるとエコーのガイドライン以外でも各病気ごとの資料ガイドラインもありますので、かなり広い範囲で学んでいかなければいけないですね。
あとは一次医療でどういった症例に対して検査をすべきなのか、専門領域以外はどういうところをオーダーを立てればいいのかというのもわからないという問題点があげられます。専門外のエコー経験がない中で何を検査すべきか、どういう風にフォローすべきかというような的確な判断ができるかというとなかなか難しいとそういったところで、エコー装置を購入したけれども検査は行わずだんだん離れていき、埃をかぶっているエコー装置がどんどん増えているというのが、実情ではないかと感じます。
Youtubeでも対談動画を掲載していますので、是非ご覧ください。